どんな状況下でも学びは子どもの権利
「ミーティングオウル」は教育現場で活用されるべき

庄栄小学校 様

緊急事態宣言による要請で、休校や分散登校などを強いられている教育現場。そんななかでも、子どもたちの教育を受ける権利を守るためにさまざまな方法が各現場で模索されています。特にオンライン授業といったITの活用が推進されるなか、大阪府茨木市庄栄小学校では2020年11月、新型コロナ支援金を利用して「ミーティングオウル」が導入されました。まるで学校にいるような共有感、臨場感、交流感を活かし、不登校傾向児童へのサテライト授業、学内の文化祭、他校との交流会など、小学校にとって重要な場面でオウルが活躍しています。使用実態をリモートインタビューしました。

大阪府茨木市三島小学校 校長 笹川千昌先生(オウル導入時は庄栄小学校教頭)

大阪府茨木市庄栄小学校 首藤響太先生

不登校傾向児童のサテライト授業を強化するため
高性能マイクを検索するうちオウルがヒット

──オウルとの出合いを教えてください。

笹川先生:コロナ禍をきっかけに、小学校においてもオンライン環境を整える必要が出てきたことで、以前から検討していたWeb会議サービスZoomの活用を、タブレットを利用して始めたのですが、タブレットでは拾える声の範囲が狭かったんです。それで、教室中の児童の声が拾える無指向性(全指向性)のマイクはないかと探していたとき、たまたまYouTubeのおすすめ動画に「ミーティングオウル」の実例動画が上がってきたのですが、一発で「求めているものはこれだ!」と思いました。本校の抱えている、もう一つの課題にもマッチすると期待しました。

──それはどのような課題ですか?

笹川先生:ほかの児童と一緒に教室で授業が受けづらい不登校傾向児童の学びをどう保障するのか、という「学力保障」の課題です。庄栄小学校には、当時そのような児童が何人かいたんです。それでZoomをつないで別室で授業を受けてもらうサテライト授業を提案しましたが、導入には消極的な意見が大半でした。そういうなかでコロナ禍が起こり、在宅での授業の対応も含めて、声を広く拾う無指向性マイクを探し始めた矢先に、オウルが飛び込んできたというわけです。つまり、不登校傾向児童のサテライト授業の実施をそもそもの目的として、オウルの導入につながっていったのですが、導入後には活用範囲はもっと広がりました。

首藤先生:わたしは笹川先生に聞いて初めてオウルを知ったのですが、「これはおもしろいな」と思いました。それまでは、定点カメラの全景映像での中継で難しいなら、自分がタブレットを持って教室内を動き回るかしかないかなという発想だったのですが、機械を動かさず360度が撮影できて、しかも話者にフォーカスするなんて衝撃を受けましたね。

──導入に消極的な意見とは、どんな声でしょう?

首藤先生:まず教員はITに疎いところがあります。パソコンと聞いただけで尻込みをする先生方もいますので、「Zoomでサテライト授業をしましょう」と言っても、「なにそれ?」となりまして。

笹川先生:ですからオウルについても、いくら素晴らしいツールだからと導入を提案してみても、「自分に使えるかな?」「うまく活用できるかな?」と及び腰でした。また、当時の校長先生から「こんな高価なものを買って、本当に使いこなせるのか?」とも指摘がありましたね。

──どう突破されたのでしょうか?

笹川先生:オウルは無料で体験利用の貸出ができるので、「とにかく実物を触ってみるしかない」と申し込んだんです。

無償トライアル5日間に2回の授業研究を行い
「これは使える!」と確信を得た

──無償の体験利用ではどのようにテストされたのでしょうか?

笹川先生:貸出を受けた期間は5日間だったのですが、その間に先生方と行なう「授業研究」を2回入れました。1回目は、5年生の人権教育の授業研究です。首藤先生もスタッフとして参加していました。コロナ禍のため、参観する教師は教室に入らずにZoomで配信する映像を別会場で見るということになっていました。オウルを導入する以前から決まっていたもので、先ほど首藤先生が言ったとおりタブレットを持って回って撮影する予定でした。そこにオウルを使ってみたんです。オウルは期待通り画質も音声も良く、首藤先生も教室内をうろうろしないで済んだんですよね。

首藤先生:オウルがやってきて本当に助かりました。わたしがうろうろすると、子どもたちの集中力を途切れさせることになったかもしれないので。

──見学された先生方からの感想はいかがでしたか?

首藤先生:「こんなものがあるんだ!」「おもしろい」とみなさん驚かれていましたね。

笹川先生:「タブレットより画質も音声もいい」という声が多かったです。特に児童が一人ひとり発言する授業だったので、話者にフォーカスするオウルの特徴が活かされていたと思います。

──2回目の授業研究ではどうでしたか?

笹川先生:2回目は初任者研修でした。1年目の先生のうち一人が代表で授業をし、ほかの先生方が参観するというものです。この授業では、初任の先生方は教室内に入ってリアルで見学をしたのですが、市の教育委員会の方々やほかの先生方は別室でオウルによる中継を見学しました。すると、市教委の方も「これはおもしろいですね!いくらですか?」と大変興味を持たれたので価格をお伝えしたところ、むしろ「12万円でこれだけできるなら安いですね」という反応があって、価格に購入のハードルがあった私たちには新鮮な反応でした。

オウルはセッティングも楽ちん
マニュアルを見ずに設置完了

──授業研究の際には、オウルは教室のどこに置かれたのですか?

笹川先生:先生と児童たちの間ですね。教卓の横といいますか、先生の斜め前です。

──教室の子どもたちは、オウルにどんな反応を示しましたか?

笹川先生:実は先ほどの人権教育の授業研究をする前に、テストしてみようとある授業中の教室でこっそりセッティングしていたことがあったんです。その際、電源を入れたら起動音が鳴って。フクロウを模して「ホッホウ」と鳴きますよね。すぐに「フクロウだ!」と子どもたちに気づかれてしまって(笑)。特に低学年の子どもたちには親しみやすいようです。

首藤先生:オウルはカメラに見えないので、「これなに!?」「どこで見ているの?」と興味津々ですね。

──オウルを初めて利用された際、接続やセッティングに問題はありませんでしたか?

笹川先生:オウルは設定に困ることはなく、楽です。タブレットでZoomを使うほうが、カメラの位置や角度の調整が大変でした。ほかの先生方も、一度使えば「これは便利!」となりました。スピーカーとカメラ、マイクが1台になっているので。

首藤先生:オウルを初めて見て、「こんなの設定するのは無理、どうしたらいいの」と言っていた先生も、「コンセントとUSBケーブルを挿し込むだけですよ」と説明したら、すぐに自分で接続して「本当に簡単に設定出来た!」と感心していました。みなさん、そもそもマニュアルも見ていないのですが、特に問題なく利用できています。

文化祭も外部講師を招く講演会も「オウルがあるやん!」と実現

──活用範囲が広がったとのことですが、授業以外ではどのように使用されているのでしょう?

首藤先生:昨年、本校の文化祭である「あそびんぴっく」という行事で使用しました。コロナ禍で開催の中止も考えましたが、先生方から「オウルがあるやん!」と声があがりZoomで中継してみようということになったんです。きょうだい学級の制度を利用して、たとえば6年生のクラスの出し物を1年生のきょうだい学級に中継するという試みです。見学する1年生の教室にオウルを置き、発表する6年生の教室には、出し物を見ている1年生の様子が見えるよう設定したんです。発表している子どもたちからは、「見てくれている1年生の様子がよくわかって、反応が見えるからやりがいがあった」という感想が聞かれました。

笹川先生:オウルがなくてZoomだけだったときには、「あそびんぴっく」をやろうとは発想すらしていなかったのに、オウルを導入してからさまざまなアイデアが先生方から出るようになりました。先生のなかには、周りの先生に「オウルは使えるよ」と広めてくれるインフルエンサーも出てきました。

──教育現場において、オウルというツールにどのような期待を持たれていますか?

笹川先生:コロナはさておいても、これからの教育現場で活用すべきツールだと実感しています。これも昨年の実例ですが、金沢大学の森下知晃教授とZoomをつないで「地球を見つけにいこう!」というテーマで講義をしてもらったんです。その際も、オウルを使用しました。森下教授に、子どもたちからの質問にも答えていただいてとてもいい交流ができました。「クラス全体の雰囲気がわかって良かった」という感想もありました。遠く離れた人にわざわざ足を運んでいただかずとも、“本物のお話が聞ける”ことは素晴らしいですね。

首藤先生:以前は、授業研究では普通にビデオカメラで撮影・録画して、それを見てもらうやり方でオンライン中継はまったくやっていませんでした。それがコロナ禍というきっかけもありますが、わたしたちにとっては「オウルきっかけ」でオンラインに踏み切ったと言えると思います。こういうツールがあったから、実現できたことですね。

AIのディープランニングにより
教育現場に特化した「スクール・モード」も夢じゃない?

──今後、オウルにこんなふうに進化してほしいというポイントはありますか?

首藤先生:実際に学校で使用してみて感じたポイントとして、教室の後ろのほうの席の子たちまで、もうちょっと広く声が拾えたらいいと思います。どうしても、オウルに近い席の児童ばかりがフォーカスされがちなんです。また、教室ではグループに分かれての話し合いもよくありますが、みんながいっせいにしゃべり出すと音が重なってしまってよく聞き取れなくなります。それともう一つ、オウルのフォーカス機能はいったん捉えた話者がしばらく黙っていても、次の発言を予測して固定したまま待ちますよね? 教室では、先生が子どもたちに質問を投げかけて待つ場面もしばしばで、そうすると先生だけが映っている時間が長くなるんです。フォーカスはAIが判断しているということなので、AIが学校の様子を学んで更新されていくと素晴らしいですね。

笹川先生:確かに学校現場に限ると、手を挙げたり席を立ったりする、そうした動作をジェスチャーとしてディープランニングすることによって、次の話者を予測できるようになればいいですね。「スクール・モード」ができたらいいなと思います。

首藤先生:モードはいいですね。大人の会議にもオウルは使いますから、利用場面に応じて「スクール・モード」と「ミーティング・モード」を切り替えられると便利だと思います。